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日銀総裁の2025年ジャクソンホール会議での公演内容はすっごく薄いしミスリードがある

人口減少下における日本の労働市場:

ダイナミクスの変化とマクロ経済へのインプリケーション

カンザスシティ連邦準備銀行主催シンポジウム

パネルセッション「転換期の労働市場の政策的含意」

における講演の抄訳

(於・米国ワイオミング州ジャクソンホール)

日本銀行総裁 植田 和男1.はじめに

シンポジウムにご招待いただき、 まずは主催者の皆様に感謝申し上げます。

今年のテーマ ― 「転換期の労働市場」 ― は、 日本と関連性が高いものです。

実際、日本の労働市場は大きく変化していますが、その方向性や変化の底流

にある要因には、わが国に特有のものが存在しています。

1990年代初めの資産バブルの崩壊後、ほぼゼロ%の物価上昇率と経済の停

滞が続いたことに加えて、労働供給の増加を企図した構造政策が採られてき

たことで、わが国では、人口動態の変化から生じる労働需給の引き締まり圧

力が長らく覆い隠されてきました。2013 年以降の日本銀行による大規模な金

融緩和は、コロナ禍後の世界的なインフレの進行と相まって、わが国の物価

上昇率をプラス領域へと押し上げました。現在は賃金も上昇しており、人手

不足への対応は、日本経済にとって喫緊の課題の一つとなっています。本日

は、日本の労働市場で起きている変化をご説明したうえで、そうした変化と

マクロの経済動向との関係についても、お話ししたいと思います。

2.人口動態のトレンド

わが国の人口動態は、多くの国々と同様、大きく2つの要素によって規定

されてきました。第1に、合計特殊出生率は、1950 年代に4程度から2程度

まで急速に低下しました。その後、出生率は 1980 年代初めから再び低下し、

2024 年には 1.15 となりました。第2に、平均寿命をみると、男性は 1955 年

の63.6 歳から 2024 年には 81.1歳、女性は 1955 年の 67.8 歳から 2024 年に

は 87.1 歳へと、それぞれ延びました。これらの結果、生産年齢人口は 1995

年をピークに、総人口はそれから遅れて 2008 年をピークに、減少に転じまし

た(図表1) 。

人口減少が労働市場の引き締まりや賃金の上昇につながるかどうかは、経

済の様々なダイナミクスだけでなく、人口減少が家計や企業にどのように認

識されるかという点にも左右されます。

1図表2は、短観の雇用人員判断DIを示しています。1980 年代後半から

1990年代初頭にかけては、 経済が過熱し、資産価格が大きく上昇するもとで、

労働需給が短期的に引き締まる局面がみられました。こうした労働需給の引

き締まりには、生産年齢人口が減少に転じるタイミングが近づくなか、企業

がより多くの労働者の確保に努めていたことも影響しています。もっとも、

バブル崩壊とその後の金融不安は、長期にわたる経済の停滞をもたらし、そ

の後のグローバル金融危機も経済を一段と下押ししました。労働需給は、人

口の減少にもかかわらず、緩和した状態が続き、2010年代半ばに大規模な金

融緩和が実施されるもとで、ようやくタイト化の動きが始まりました。

3.女性とシニア層の労働参加の高まり

この間、労働力率の高まりは、人口動態の変化が労働供給に及ぼす影響を

緩和する方向に作用してきました。女性やシニア層の労働力率は、2010 年代

初め以降、はっきりと上昇しており、生産年齢人口の減少を十分に補ってき

ました (図表3) 。 15~64 歳の女性の労働力率をみると、 2000 年代初めは60%

程度でしたが、2025 年6月時点では 78%に達しています。

各種の調査によれば、こうした労働力率の高まりは、政策面の対応と社会

的な変化の双方に起因しています。例えば、短時間労働者に対する社会保険

の適用拡大や育児・学童保育の拡充のほか、女性の雇用を支援する社会慣行

の広がりが挙げられます。シニア層に関して言えば、これまでの法整備によ

って、企業は、65 歳までの雇用機会確保を義務付けられているほか、70歳ま

での就業機会確保に関する努力義務も課せられています。

もっとも、労働力率の更なる引き上げ余地は限られています。実際、現在

の女性の労働力率をみると、既に北欧諸国と遜色ない水準となっています。

65 歳以上のシニア層の労働力率も、2024 年時点で 25%を超える水準まで上

昇しており、OECD諸国のなかでは、韓国に次いで二番目に高い水準とな

っています。

以下の2つの領域では、依然として労働供給に拡大余地がありますが、い

2ずれも相応の政策的な取り組みが必要になります。第1に、現状、女性の正

社員比率が 50%程度と男性の 80%程度と比べて低いことを踏まえると、こ

の比率を引き上げ、労働時間を増やすことが考えられます。これを実現する

ためには、例えば、学童保育を一段と拡充するなどの施策が必要になるでし

ょう。第2に、外国人労働者に関してです。労働力人口に占める外国人労働

者の比率は3%程度にとどまっていますが、2023 年から 2024 年にかけての

労働力人口の増加率に対する外国人労働者の寄与度は、 50%を超えています。

外国人労働者をさらに増やしていくかについては、より幅広い議論が必要に

なるでしょう。

4.賃金上昇の復活

続いて、賃金の動向に話題を移したいと思いますが、以下のお話は、労働

市場のダイナミクスと予想物価上昇率の双方が関係します。

わが国の賃金上昇率は、労働需給が引き締まる局面が時折みられたにも関

わらず、長年にわたって停滞した状況が続きました。1990 年代半ばから 2022

年までの期間をみると、正社員のベースアップ率は、マイナス1%からプラ

ス1%の範囲にとどまり、消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率も、同様に

弱めの動きが続きました(図表4)。このように賃金が上昇しなかった背景と

しては、労働力率が上昇し、労働供給が増えたことに加えて、デフレ予想が

定着したことが挙げられます。そうした環境下において、企業は、競合他社

は販売価格を引き上げないだろうと想定したため、コストの上昇や需要の高

まりに直面した場合であっても、自社の販売価格や賃金の引き上げを抑制し

ました。こうした均衡から脱け出すためには、大きな外的なショックが必要

だったと言えます。

コロナ禍後の世界的なインフレの進行は、こうした外的なショックとなり

ました。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2023 年初めには 4.2%ま

で上昇し、プラスの物価上昇率が続くという予想が定着し始めました。春季

労使交渉では、3年連続で高い賃上げ率が実現しており、定期昇給分を含ん

3だ今年の賃上げ率は 5.25%と、34 年ぶりの伸び率となりました。賃金上昇が

大企業から中小企業にも広がっていることも、重要な点です。

先行きを展望すると、大きな負の需要ショックが生じない限り、労働市場

は引き締まった状況が続き、賃金には上昇圧力がかかり続けると見込まれま

す。この間、わが国の労働市場では、労働力率の高まり以外にも、構造変化

が生じています。

5.労働市場の流動性の高まり

まず、労働市場の流動性は、歴史的に低い水準だったところから高まって

きています。わが国では、従来は正社員の転職が非常に少なかったため、企

業は、人材係留のためにベースアップを行う圧力にほとんど晒されていませ

んでした。 もっとも、 最近では、 人材確保に向けた競争が激しくなっており、

図表5の左のグラフが示すように、とりわけ若い世代の間では、正社員の転

職が増えています1

賃金が上昇している点も、 こうした労働移動を後押ししています。例えば、

中小企業のなかには、賃上げの動きに追随できず、事業の停止や合併を選択

している先もあり、その結果、労働者が転職市場に流れてきている面があり

ます。この点、図表5の右のグラフは、生産性の低い企業から高い企業への

労働移動が増えている可能性を示しており、人口動態の変化に伴う逆風を軽

減しているようにも見受けられます。こうした動きは、人手不足のもとでの

緩やかな賃金の上昇が、資源配分の効率性を高める方向に作用する一例と言

えるかもしれません。

6.資本による労働代替

構造的な人手不足は、省力化投資を促進している面もあります。宿泊・飲

食サービスや小売等の労働集約的な業種は、こうした動きを牽引しており、

1 最近のわが国における労働市場の流動性に関しては、日本銀行(2025)や池田ほか(2024)

を参照。

4これらの業種におけるソフトウェア投資の伸びは、他の業種を上回っていま

す(図表6)2

。より広い視点でみると、省力化投資は、設備投資の重要な推

進力になっていると言えます3

この間、日本企業におけるAIの活用状況は、依然として初期段階にある

ことが窺われます(図表7)。先行研究では、定型的な業務は、相対的に女性

や非正規労働者によって担われており、こうした業務の多くは、AIの技術

によって自動化され得るとの指摘もみられています4

。 もっとも、 わが国では、

非正規労働者の比率はこのところ低下する動きがみられているものの、過去

10年間における雇用者数の増加の多くは、女性の労働参加によって実現して

います。AIの活用により、若年層の雇用に影響が生じている国も見受けら

れますが、日本では、若年層の失業率は過去 30年で最も低い水準となってい

ます。これまでのところ、AIの活用が日本の労働市場に大きな摩擦を引き

起こしている訳ではありません。 人口減少の影響を相殺するのに十分なほど、

AIが労働力を代替できるのかどうかは、現時点では分かりませんので、今

後の展開を見守る必要があるように思います。

7.おわりに

本日お話ししたとおり、1980 年代に始まった人口動態の変化は、このとこ

ろ、 人手不足感の強まりと持続的な賃金上昇圧力をもたらしています。また、

労働力率の上昇、労働市場の流動性の高まり、資本による労働代替の広がり

を通じて、経済の供給サイドにも大きな影響を及ぼしています。

こうした一連の動きは、労働市場の状況と賃金や物価との関係を複雑にす

るとみられます。日本銀行としては、 今後の動向を丁寧にみていくとともに、

2 人手不足下における最近のわが国の設備投資動向については、池田・近松・八木(2023)

を参照。

3 「金融政策の多角的レビュー」の一環として、日本銀行が実施した大規模な企業向けアン

ケートの結果をみると、多くの企業は、前向きな設備投資スタンスの理由として、人手不足

を挙げている。詳しくは、日本銀行(2024)を参照。

4 例えば、De La Rica and Gortazar (2016)やBrussevich et al. (2018)を参照。

5経済の供給サイドで起きている変化に関する評価も踏まえたうえで、金融政

策を運営していく方針です。

ご清聴ありがとうございました。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2025/data/ko250824a1.pdf

労働者の定着率が悪く流動性が活発なのって日本の場合ブラック会社が多すぎるからで、しかも労働者の流動性が高いことが直接賃金の上昇につながってるわけでもないのに何言ってるんだろ?

ってか利上げすんの?

利上げしないとまずいから労働市場が堅調なように見せたいんだよね?

AIでの労働市場の一部収縮は日本でも起こりそうということかな?

こりゃダメだ

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