日本維新の会が「即時廃止」を目指す税制優遇65件の中身と、庶民への影響を整理する
2026年8月22日、日本維新の会は租税特別措置(租特)の見直し案をまとめ、国税・地方税あわせて65件を「即時廃止」対象と判定したと報じられました。少なくとも約7000億円規模の税収増を見込み、消費税減税や高校授業料無償化などの財源に充てる方針です。2027年度税制改正の議論に向け、各省庁の要望締め切り前に自民党や省庁へ協力を迫る形となります。
維新は連立合意などでも「政策効果の薄い租特・補助金は大胆に廃止する」と一貫して主張してきました。租特は特定の政策目的(賃上げ促進、少子化対策、産業振興など)で設けられた時限的な優遇ですが、効果検証が不十分で既得権益化し、税制の「公平・中立・簡素」原則を歪めるとの批判が根強いです。
報道で具体的に名前が挙がった主なもの
報道では特に以下の2つが強調されています。
- 中小企業向け賃上げ促進税制
企業が前年度より従業員の給与総額を一定以上増やした場合、増加額の一部(中小企業では基本15%、条件を満たせば最大35%前後)を法人税・所得税から税額控除できる制度です。中小企業向けは比較的低い賃上げ率(1.5%以上)から適用でき、教育訓練費や子育て・女性活躍認定での上乗せ、赤字時の繰越控除なども設けられてきました。大企業向けはすでに廃止・縮小の流れにあり、中小・中堅向けも要件強化や期限到来での見直しが議論されています。
維新の即時廃止案に含まれるとされ、企業が賃上げを実施しやすくするインセンティブを削ることになります。 - 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置
父母・祖父母など直系尊属から18歳以上50歳未満の子・孫へ、結婚や子育て資金を一括贈与する場合、最大1000万円(うち結婚関連は300万円まで)を非課税とする制度です。挙式費用、新居初期費用、不妊治療、出産、未就学児の保育・医療費などが対象で、信託口座などを通じて管理します。
2015年創設以来延長を重ね、現在は2027年3月末までの措置ですが、利用は累計で約7900件・約250億円程度と低迷しています(教育資金一括贈与に比べ大幅に少ない)。手続きの煩雑さや対象範囲の限定が理由とされ、政策効果は限定的との評価もあります。
このほか、過去の関連議論では教育資金一括贈与の廃止(すでに終了方向)、研究開発税制や一部の投資促進税制の見直しなども租特全体の点検対象に入ってきました。65件の詳細リストは現時点で一般公開の詳細報道が限られるため、今後の党会合や税制改正過程で明らかになる見通しです。
庶民にとってデメリットになりやすいポイント
租特廃止は「無駄を削って減税財源に」という維新の理屈ですが、直接・間接に庶民(特に中小企業で働く人、子育て世帯、中間層)に影響が出やすいものを中心にまとめます。
- 中小企業の賃上げインセンティブ低下 → 給与上昇の鈍化リスク
中小企業は日本の雇用の大半を担います。税制優遇がなくなれば、賃上げのハードルが上がり、物価高下で実質賃金が伸びにくくなる可能性があります。特に「防衛的賃上げ」(人材確保のための最低限の上げ)をしていた企業に影響が出やすく、従業員の手取り増加が遅れる恐れがあります。間接的に景気や消費にも響く点は、庶民全体のデメリットです。 - 結婚・子育て資金の非課税枠消失 → 家族間支援のハードル上昇
利用件数自体は少ないため、恩恵を受けていた世帯は限られます。しかし、祖父母世代から若い世代へまとまった支援を受けやすい仕組みが消えると、結婚式や出産・保育の初期費用負担が重く感じる世帯が出てきます。富裕層寄りの制度との批判もありますが、中間層の家族支援の選択肢が減るのはデメリット。ただし、都度の生活費・教育費贈与はもともと非課税扱いのケースも多いため、影響は限定的との見方もあります。 - 全体としての公平性と財源の使い道
租特は大企業や特定業界に偏りやすいとの指摘もあり、廃止で「公平性が高まる」面はあります。一方で、中小向けや子育て関連を含むと、恩恵を受けていた層の負担増につながり得ます。7000億円規模の増収は消費税減税や高校無償化に充てるとしていますが、実際の制度設計や他の歳出削減とのバランス次第で、減税効果を相殺する可能性も。
また、効果の薄い制度を残すより廃止すべきという維新の立場は明確ですが、代替の支援策(直接給付や社会保険料軽減など)が同時に進まないと、特定の層だけが「損をした」と感じやすいです。
まとめ:メリット・デメリットのバランスを見る視点
維新の狙いは「効果の薄い優遇を切り、減税や教育無償化の財源を捻出する」ことです。利用が低迷する結婚・子育て贈与や、賃上げ効果が検証不十分とされる税制を対象にするのは、その一貫した姿勢を示しています。
庶民目線では、
- 短期的デメリット:中小企業従業員の賃上げペース鈍化、家族間の一括支援の選択肢減少。
- 長期的可能性:財源が本当に消費税減税や高校無償化・社会保険料軽減に回り、手取りが増えればプラスに転じる。
今後の詳細リスト公開や2027年度改正議論で、具体的な影響範囲がより明確になるでしょう。制度の「誰が得して、誰が損するか」を透明化し、効果検証を徹底する方向自体は望ましいですが、中小企業や子育て世帯への配慮をどう担保するかが鍵です。最新情報は公式発表や報道を確認してください。

