目次内縁関係の判断基準
内縁関係が成立しているかどうかは、主に以下の2つの基準から判断されます。
①双方に婚姻の意思があること
実質的には夫婦になりたい、という意思をお互いに持っていることを意味します。そのため、結婚についてはまだ考えておらず、単に同棲しているだけの場合は、内縁関係は成立しません。
本人の気持ちによるところではありますが、「結婚式を挙げているか」「周囲から夫婦として認識されているか」といった客観的な事情から、婚姻の意思があると認められることもあります。②結婚している夫婦とほとんど変わらない共同生活を送っていること
具体的には、「日常生活を共にしているか」「家計を同一にしているか」といった事情から判断されます。
ただ、共同生活を“ある程度の期間(一般的には3年以上)”送っていなければ、内縁関係は認められません。内縁関係を証明するには?書類や方法について
内縁関係を証明するには、先ほど紹介した2つの要件を満たしていることを明らかにする必要があります。
結婚していれば、「戸籍謄本」から夫婦であることを簡単に証明できるのに対し、内縁関係ではこうした決定的な証拠はありません。そのため、次に掲げるような様々な書類や事実関係から、内縁関係を証明していくこととなります。
- 住民票
- 賃貸借契約書
- 健康保険証
- 遺族年金証書
- 給与明細
- 民生委員が作成する内縁関係の証明書
- 長期間の同居
- 親族や友人たちから夫婦として扱われている
- 結婚式や披露宴を挙げたことがわかる書類や写真
上記に挙げた事項について、一つずつ掘り下げてきましょう。
住民票
住民票を同じにしていて、一方の“続柄”の欄が「妻(未届)」や「夫(未届)」といったように記載してあれば、その住民票は内縁関係を証明する有効な証拠になり得ます。
住民票を同じにしているということは、一緒に住んでいることの証明になります。加えて、一方の続柄が「同居人」などではなく、「妻(未届)」や「夫(未届)」になっていれば、婚姻の意思があると判断されやすくなるでしょう。内縁関係を証明するための証拠として、「住民票」は特に重要なものといえます。
賃貸借契約書
同居するお住まいを借りた際に作成した「賃貸借契約書」のなかで、同居人について、「内縁の妻」「内縁の夫」「妻(未婚)」「夫(未婚)」などと記載してあるものは、内縁関係の証拠として使えます。同じ家に住んでいること、そして婚姻の意思があることの証明に繋がる可能性があるでしょう。
健康保険証
健康保険法の規定では、“配偶者”には、「事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」とされています。そのため、内縁関係でも、一定の要件を満たせば、内縁の妻(夫)を健康保険の被扶養者にすることが可能です。
被扶養者となった者には、内縁の相手が加入する健康保険の健康保険証が交付され、保険証には「被扶養者」と書かれます。内縁関係にあるという確認がなされたうえで、被扶養者として保険証を手にするので、こうした保険証は内縁関係の証拠として役立ちます。
遺族年金証書
内縁の相手が亡くなり、遺族年金を受け取った際の「遺族年金証書」も、内縁関係を証明するための証拠になり得ます。
遺族年金とは、国民年金または厚生年金の保険に加入していた者が亡くなったとき、その者に生計を維持されてきた遺族(配偶者や子供など)が受け取る年金です。先ほどの健康保険と同じく、ここでいう配偶者にも事実婚状態にある者が含まれているため、内縁関係であっても、受給要件を満たしていれば遺族年金を請求できます。
請求が認められると、遺族年金証書が送られてきます。婚姻届は出していないけれど、パートナーが亡くなって遺族年金証書を手にしているということは、内縁関係だと確認されたことを意味します。したがって、内縁関係の証明になる可能性が考えられるのです。
給与明細
給与明細に、会社から受け取っている家族手当(扶養手当)の金額が記載されている場合、内縁関係を証明するための証拠になる可能性があります。
勤務先によっては、「家族手当(扶養手当)」といって、家族を扶養している者に対して手当を支給しているところがあります。そして、なかには内縁関係のケースでも支給を認めている企業も存在します。したがって、給与明細に家族手当の記載があると、内縁関係の証明として役立つこともあるのです。
ただ、家族手当の支給は法律で決められているものではありません。支給するかどうかは企業の自由であり、内縁関係を対象に含めるかも企業次第です。そのため、給与明細が必ずしも内縁関係の証明に繋がるとは言い切れませんので、注意しましょう。
民生委員が作成する内縁関係の証明書
民生委員に作成してもらった「内縁関係の証明書」は、内縁関係を証明する際の証拠になり得ます。
民生委員とは、地域に暮らす人々の相談相手となったり、生活支援をしたりするなどのボランティア活動を行う、非常勤の地方公務員をいいます。お住まいの地域の民生委員に依頼すれば、「内縁関係の証明書」を作成してもらえることがあり、内縁関係を証明する際に役立つ可能性があります。
ただし、民生委員の証明事務は、行政の福祉サービスの利用等を目的として作成されることが前提であり、また、法的証拠として取り扱われるものや状況確認ができない場合には対応してもらえませんので、この点は留意しておいてください。
長期間の同居
夫婦同然の共同生活をしていた同居期間の長さは、内縁関係の成立の判断で考慮される事情の一つです。同居期間は長ければ長い方が、内縁関係にあることを証明しやすくなります。
内縁関係の成立を認めてもらうためには、一般的には3年程度の同居期間が必要だといわれています。ただ、個別の事情によって必要な期間は異なることもありますので、3年はあくまでも目安だと考えましょう。例えば、3年より短い同居期間でも、「周囲から夫婦として見られている」「結婚式を挙げている」といった客観的な事情から、内縁関係の成立が認められる場合はあります。
親族や友人たちから夫婦として扱われている
親族・友人・勤務先の人たちなど、周囲の人から夫婦と同じような扱いを受けているという客観的な事情は、内縁関係を証明する一つの材料になります。
例えば、「親族の冠婚葬祭に夫婦として呼ばれている」「お互いの友人に夫婦だと紹介している」といったケースでは、周囲の人から夫婦として扱われていると判断されるでしょう。
結婚式や披露宴を挙げたことがわかる書類や写真
結婚式や披露宴を挙げたことがわかる書類や写真は、内縁関係の証明になる可能性があります。結婚式や披露宴を挙げる目的には、お二人が夫婦であることを多くの人に広めたい、事実上結婚したという意識を強めたい、といったことが考えられます。お互いに婚姻の意思があることが読み取れますので、内縁関係が成立していたと判断されやすくなるでしょう。
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