ルフィの闇名簿とは?
襲う先は決められていた。強盗事件の裏にある闇名簿
「なぜ狙われたのか全く見当がつかない。俺の家より大きい家なんてすぐ近くにいくらでもあるのに……」 1月初旬に起きた強盗事件で、北関東に住む被害者の70代男性は事件当時のことをこう話す。’21年10月以降、1都7県で同一グループの犯行とみられる強盗事件が14件発生している。 なかには強盗殺人事件まで起きており、これまでに30人以上が逮捕された。警視庁関係者は「襲う先を狙い定めて、一連の事件は起きた」と話す。
一件あたり40~50円で手に入る「顧客リスト」
「連続強盗事件ではおそらく、特殊詐欺で使われた名簿が使用されたのでは」 事件についてこう語るのは、元特殊詐欺グループのリーダー格で40代のフナイム氏(仮名)。’15年まで組織的に詐欺を行っていたことから、闇名簿事情に詳しい。 「当時は、名簿屋から顧客リストを仕入れてました。ネットで検索すれば名簿屋はすぐ見つかる。『65歳以上、女性、住所記載』と欲しい属性を電話で相談します。名簿屋が出してくる名簿には、名前や年齢、住所はもちろんのこと、電話番号や家族構成、職業まで書かれています。一件あたり、平均で40~50円くらいかな。それをもとに電話をかけて詐欺をするんです」 フナイム氏によれば、名簿屋は高級商品購入者や経営者、未公開株保有者や健康食品購入者リストなどを保有しているという。
名簿の売買に違法性はない
ダダ漏れ状態の名簿だが、個人情報を売買することに違法性はないのだろうか。弁護士の三平聡史氏が解説する。 「削除要求に応じるための窓口をホームページに設置していれば、原則として名簿の売買に違法性はありません。名簿の買い手が強盗をするとわかっていれば強盗罪幇助などの罪に問うことも可能ですが、使用目的がわからない状態であれば、名簿の売買自体に法的な問題はないのです」
都内にあるグレーな名簿屋を直撃
取材を続けていくと、犯罪に使われると知りながら名簿の売買を続ける事業者を知っている人物に接触できた。 「千代田区とかに名簿屋が多い。会社名が何回も変わっている。神保町にあるから行ってみればいい」 実際に向かってみると、神保町の大通りのすぐ路地裏に、その名簿屋はあった。インターホンを押しても誰も出ない。近隣住民が話す。 「半年前からピタッと誰もいなくなったんだよね。看板に堂々と『めいぼや』と書いてあるから、最近の連続強盗事件と関わってなければいいんだけど……」 同社の電話番号を前出の人物から教えてもらい、直接会って取材できないか尋ねると、「折り返す」との一点張り。それ以降、その名簿屋から電話がくることはなかった。
名簿屋だけではなく名簿ブローカーが台頭
この2年間で闇名簿事情は悪化しているという。 名簿屋との接触を図ろうとしてから2日後、半グレや暴力団事情に詳しい人物と接触することができた。40代男性の市川康太さん(仮名)。最新の闇名簿事情や今回の連続強盗事件について聞いた。 「闇名簿は犯罪グループが完成させる。業者やブローカーから名簿を受け取ってから“洗う”んだよ。日当のバイトとして、受け子や出し子に実際の住所へ行き、本当に住んでいるのかを調べさせたりね」 一体どのように調べさせるのか。市川さんが驚愕の手口を明らかにした。 「例えば、巡回訪問をしていると言い、警察官を装って実際に自宅へ押しかける。『防犯時の台帳リストを作成しているので話を聞かせてくれませんか』と尋ね、家族構成の裏ドリや出入りの時間などを聞くんだ。ウーバーイーツなどの配達員にも手伝ってもらっている」
金融マンがカネ欲しさに「情報流し」
最近では名簿屋以外の人から個人情報を仕入れることも多くなってきているという。 「ピンで活動しているブローカーが個人情報を仕入れて売りさばいている。企業が情報漏えいして流出したものだったり、不良社員から入手したりする。金融マンは多いね。営業成績不振でカネ欲しさに情報をよく流してしまう。 彼らの顧客情報には、保有資産額まで書いてあるから5000人分あれば、100万円とかにもなるんじゃないかな。今話題になってるフィリピンの件、あれは誰もが知ってる超大手証券会社から流れたってのは有名な話だよ」 個人情報を取り扱う場合、個人情報保護委員会に届け出が必要となる。もちろん、このブローカーの行為は違法だ。 「正直な話、詐欺より強盗のほうが効率いい。お金を取るのに目星がついていたら、強盗のほうが手っ取り早いし。今回の事件では、300万円とかの香典が家にあることもわかっていた。狙う宅もじじいとばばあにすれば、腕力ないし、簡単に拘束できるし」
取材班が闇名簿の入手に成功
取材班はその後、実際に犯行に使われた闇名簿を入手することに成功した。入手元は特殊詐欺を実際に行っているグループの主犯格だった。その関係者が語る。 「これはある情報商材の購入者データを基にして作られた闇名簿。電話番号と保有資産額は消してあるよ。電話かけられたら困るし。保有資産額は金融系の名簿から、引っ張ってきた。こうやっていろんな名簿を合体させてブラッシュアップさせていく」 一体なぜ関係各所から、「金融機関から個人情報がダダ漏れしている」と聞こえてくるのか。見えてきたのは、金融業界の個人情報管理の杜撰さだった。
ぞんざいに個人情報を扱う金融関係者らの悪態
東京都多摩地区。取材班はある信用金庫に勤める20代男性の藤岡孝さん(仮名)と接触できた。藤岡さんが明かしたのは、堅いイメージとは逆の実情だった。 「僕らって営業をするとき、データベースからお客さまのリストを印刷して、外出するんですよね。リストを持ち出すときは、上長のハンコが必要です。形式上そうなだけで、ハンコなしで持ち出すのは簡単。上も気づいてないのか、見て見ぬふりしているのか、何も言われません」 実際に営業先リストを見せてもらうと、そこには氏名や住所のほか、その信用金庫に預けている金額も書かれていた。 「ローンを組んでもらうので、個々人の預金額は把握しないといけませんし、営業中に聞いた他銀行のおおよその預入金額などの情報も随時追記しています」 金融機関の個人名簿が簡単に持ち出せるのも驚きだが、実態はもっと深刻であった。 「なかには、営業不振の人がこのリストを不動産営業マンに渡してしまうんですよ。リストをもとに、保有資産が多い順に住宅購入の営業をするわけです。不動産屋が営業したあとに、リストを流した信用金庫の職員がローンの提案に行く。お互いwinwinな関係になるんです」 藤岡さんによれば、不動産営業マンの手に渡った顧客リストは、さらに他の人にも流れているという。
証券会社の場合、数百万円でリストが売れる」
前出の市川さんが話していた「個人情報を流すのは金融機関が多い」との言葉が蘇る。 取材班は情報の流出元とされる大手証券会社の元部長と連絡を取ることに成功した。 「数年前に問題になったけど、今でも社員が顧客情報を第三者に流している。大手だろうが中小だろうが、100万以上になるから、やるヤツは小遣い稼ぎをするよ。N社だけではなく、S社もやっているよ」 証券会社が起こしたこれまでの事件はいくつかある。’09年には、三菱UFJ証券の部長代理が148万人分の情報持ち出しで、そのうち4.9万人分の個人情報を名簿屋に売却した。’20年には、野村証券の元社員が法人顧客275社分のリストを持ち出したことが明らかになった。 「5年前にいろんな証券会社で横行して、今は数が減ったほう。証券会社の場合、数百万円でリストが売れるんだよね。普通に仕事したほうが儲かるのに、やっぱ成績不振者だから。でもバレたら社内に張り出されるし、最悪の場合は刑事告訴もある」
過去に流していた人物を直撃
外部に名簿を流している人または、過去に流していた人に会わせてほしい。取材班はダメ元でお願いしてみた。 「今日、丸の内のイタリアンレストランでご飯を食べるらしい。店の住所と本人の名前、顔写真を教えるよ」 実際に向かってみると、若い女性とワインを飲んでいる40代の中年男性がいたので、出てきたところを直撃した。 ――顧客名簿を第三者に流していると聞きました。 「何のことを言っているのかわからない」 ――社内で張り出されたことありますよね。誰にいつから売っていたのですか。 「答える必要はない」 ――受け取った金額も言えない? 「わからない」 私ではないと否定はせず、小走りに男性はタクシーまで走っていった。その後、情報を提供してくれた元部長とも連絡はつかなくなった。 闇名簿の深い実態。我々に自衛する手段はないのだろうか。
元刑事が語る闇名簿への対策方法
事態が深刻化していくなかで、警察はどこまで動けるのか。闇名簿との関わりを避けるには? 元埼玉県警捜査一課刑事で強盗事件に詳しい佐々木成三氏に話を聞いた。 「売買することは罪に問えない可能性が高く、警察として動くことは難しいのが現状です。一度載ったら消せないので、漏れているという前提で防犯意識を高めなければいけません。自分や家族の名前で検索をして、どのぐらいの情報が世の中に公開されているかを把握しておくことも、対策になるでしょう」 佐々木氏によれば、ネットの世界は性悪説と考えたほうが良いという。フィッシングメールでクレジットカードの番号や電話番号が抜き取られると、そうした情報も闇名簿に追加されていく。 「目的不明のアンケートに安易に回答しないことが第一ですが、SNS上に自身の情報を上げないことも重要です。特に高級車や高級時計、ブランド物を購入したり、高級ホテルやレストランに行った経験などをわざわざ写真に撮って投稿するのは、賢明ではありません。金持ちアピールは、犯罪者のカモになるだけです。ヤツらは名簿を洗うとき、必ずネットで検索をかけています。本名でなくても容易にわかる特定班がいたりもします」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe390b715f409ddc2a8c58331eec01997e211775?page=4
日本政府に不都合だから公開されない闇名簿
『ルフィ』を名乗る人物が指示役とされる一連の強盗事件で、“闇リスト”が使われていたとみられています。
https://web.archive.org/web/20230327220722/https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000291491.html
4年前、渡邉優樹容疑者らが関わったとされる特殊詐欺の拠点にも、闇リストが散らばっていました。過去にフィリピンの収容所で渡邉優樹容疑者ら4人と生活を共にしていたという人物に接触しました。この人物によると、一連の事件の指示は4人だけで行っていて、闇リストをかき集めていたといいます。
収容所で“4人”と生活した人物:「(Q.リストは結構な数ある)そう。金あれば何でもできる。(Q.情報はどのくらい分厚い)段ボール。あの4人クラスの人間になると、業者から『買いませんか』と来る。カード情報、名前、生年月日、アドレス、部屋番号、パスワード、全部」
リストの中身は、民間企業から流出したものだけではなかったそうです。
収容所で“4人”と生活した人物:「役所から情報を取るのが一番、大きい。税金いくら納めてるとか。(Q.市役所に協力者がいる)そう。この時代にフロッピーですよ」
役所から渡邉容疑者ら4人の元に、納税情報などを含んだ個人情報が流出していたというのです。
こうした現状に捜査関係者は、こう話します。
捜査関係者:「自治体からの漏えい、情報の販売は絶対ある。言い切れるレベルで自信ある。場所によっては、セキュリティーチェック体制も緩い。ザルなところなんてたくさんあるよ」
犯罪に利用されたかはわかりませんが、実際に役所から情報が流出する事件は相次いでいます。
2008年には、熊本県人吉市の職員が、闇金融業者に個人情報を渡したとして逮捕されました。職員は、その闇金業者に借金があったといいます。去年、東京都杉並区でも、職員が住基ネットで得た情報を漏えいしたとして、逮捕されています。
こうして流出した個人情報は、その後どうなるのでしょうか。番組では、その行く末の一端に、たどりつくことができました。
過去に特殊詐欺事件に関わった人物:「固定資産税100万円で、“1億円の不動産を所有”と計算できる。ルフィ事件が起きたいくつかの市町村の闇名簿も見たことがある。最近だけでも、10程度の自治体から流出があった」
役所から情報が流出するということは、誰しもがリストに載り、被害者になってしまう可能性があることを意味します。
おととしまで、首都圏の自治体で働いていた元職員は、現時点で完全に流出を防ぐのは難しいといいます。
元市役所職員:「個人情報を守るために研修をやったり、仕組みを整えたり、前の職場でもよくやっていたと思うけど、最後は、個人の問題になってしまうのはあると思う。休日に忍び込んで個人情報を持って行ってしまう。防いだり、感知するのは難しい」
「情報の流出は止まっていない」と証言するのは、“闇名簿“の内情を知る人物です。最近、役所から流出した7000人分の個人情報が持ち込まれたことがあったそうです。
“闇リスト”業界の内情を知る人物:「今までは組織の方が貸金に対しての返金が出来なくなり、『データを持って来い』というケースが多かったが、ここ5〜6年は向うから、リストを売りに来るというケースがあります。割と頻繁にあるんですよ。小遣い稼ぎか借金か知りませんけど。単純に卒業名簿なんかは、(1人)100円とか50円とか。(Q.納税者情報になると何倍に)10倍ほどに」
警察は、『ルフィ』を名乗る人物が指示役とされる一連の強盗事件が、役所から流出した情報をもとに行われていた可能性もあると見て調べを進めています。
◆信頼すべき役所から個人情報が流出して、犯罪につながっているのは何ともやるせない事態ですが、国はどう対策しようとしているのでしょうか。
国は、組織的な犯罪そのものを封じ込め、高齢者が犯罪者グループと接点を持たないようにするために、“闇バイト強盗”などへのさまざまな対策を今週中にも取りまとめます。主な対策案です。
AIを活用して“闇バイト”情報の削除・取締り。SNSに上がっているものを、AIを駆使して取り締まるということです。そして、宅配事業者との連携。実行犯が宅配業者を装うことがあるため、宅配ボックスや置き配などで、対面をしない形を推奨していくということです。また、高齢者の自宅電話番号がすでに出回っている場合もありますので、出回っていた時にすぐに変更できるようにします。“闇名簿”の対策を強化するということです。
“闇名簿”対策の強化について、見ていきます。犯罪者グループなどに名簿を提供する悪質な“名簿屋”、個人情報を不正な手段で取得し、第三者に提供する者に対し、国は「あらゆる法令を駆使した取締りなどを推進していく」としています。
元警視庁で防犯コンサルタントの松丸俊彦さんは、「すでに出回っている“闇名簿”に関しては、販売を告知しているメッセージを削除する措置をとり、闇名簿の流れを止める。闇名簿への個人情報の供給を絶つためには、正規の業者が扱う名簿が闇に流れないために、誰に提供したかの記録の義務化など足取りがつかめるシステムが必要だ」と指摘します。
マイナンバーカードとか大丈夫?
なんか役所にパソナが入り始めてからこの手の事件多いですよね。
確かに役所のセキュリティは甘いですが、それ以上に漏洩させたやつに対しての罰則が甘い感じしますね。