ロイターによると
日銀が近く大規模緩和政策を修正することはまずない、との予想が日本ではまだ主流だと説明すると、多くの海外投資家は驚きの表情を見せる。こちらもそれに驚いてばかりだ」──。ある外銀幹部は、海外勢の間に広がる日銀の政策修正期待の強さをこう話す。
米商品先物取引委員会(CFTC)によると、IMM通貨先物・非商業(投機)部門の円の売り持ち高は、最新の12月27日時点で6.7万枚と、21年3月以来、約2年ぶり低水準に減少した。買い持ち高と差し引きすればまだ全体像は売り越しだが、金利差拡大に着目し円を売り込んでいた投機筋は、次第に戦略を転換しつつある。
今年4月には黒田東彦総裁の任期が満了する。新総裁人事はまだ不透明だが、他の主要国が続々とインフレ抑止へ金融引き締めに動く中、日銀も物価上昇を背景に早晩、政策修正を迫られるのは間違いない、との読みが投機筋にはあるようだ。
「黒田総裁は、12月の政策修正を出口への一歩ではないとしているが、市場とのコミュニケーションなく突然の決定だったので、市場は総裁の発言を額面通りに受け止められず、疑心暗鬼になっている」と、ニッセイ基礎研究所のシニアエコノミスト、上野剛志氏は指摘する。
昨年12月、日銀は長期金利の許容変動幅拡大を決定した。当日のドル/円は1日の下落率が3.81%と、ロシア危機やロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の経営危機に揺れた1998年10月7日以来、24年ぶりの大きさを記録した。「いかに大きなサプライズだったか、値動きが示した」(アナリスト)といえる。
日銀はなぜ、大きなショックを与えてでも修正に踏み切ったのか。大和証券シニア為替ストラテジストの多田出健太氏は、岸田文雄政権の意向があったとみる。景気を停滞させかねない金融引き締め的な政策を政府が求めるのは異例だが、「物価高で不人気となった円安政策の是正を含め、アベノミクスから脱却して独自色を強めたい政府が、水面下で日銀に圧力を強めているのではないか」と話す。
岸田首相は3日、文化放送のインタビューで、日銀との共同声明(アコード)について「新総裁と信頼関係を作り、政府と日銀がどう政策を進めるのか、信頼関係と連携のあり方の確認は、今後の大事な仕事だ」との考えを示した。
日銀の金融政策を巡って政策点検の実施や物価見通しの上方修正など関連報道が相次いでいることも、その裏には市場に織り込みを求める政府側の意図があるのではないか、との思惑を増幅させている。円相場は当面、日銀の政策変更見通しに右往左往する不安定な展開となりそうだ。